長い、長い、人生が終わる そろそろ
入院先のベットでそっと目を閉じ
自分の人生を振り返る
長かった一日一日を振り返る
悔いはないが、本当にやりたかったことはないか問うてみる
だけど、自分の身体はもう動かない
せつなさと、悔しさと、悲しみが身体中を駆け抜ける
心臓がドキドキ鼓動する
全身の筋肉がふるえる
少しづつ、腕をあげる
ふるえながら、5本の指が宙に舞う
ため息ついたその瞬間、まっしぐらに顔面を両手でおおう
一筋の涙が頬をつたう
喉がひくひくと嗚咽する う、う、う、とうごめく
足の指がピクピクと痙攣する
目を開けた瞬間、窓の外に目をやると、青い空と白い雲
小鳥がピピピと飛んでいる
まるで何もなかったように静かに風が吹く
そのとき、あたりがざわめき出す、生活の音が耳に届いてきた
ああ、まだ息してるんだ、と実感する
病室のドアに、へへへと微笑みながら、息子が入ってきた
50歳になった息子が
毎日、毎日、病室を訪れる
俺はこいつの為に生きてきたんだろうか
目を落としたその先にあるものは、間違いなく近づきつつある
死と恐れだけだった